私のハム職人人生の中での最終目標は店の工房の裏山にトンネルを掘り、天然環境の中での「生ハム造り」。
三瀬村は生ハムの世界一の産地イタリア-パルマ地方と比較しても劣らない自然豊かな高原です。ただパルマは年間平均気温が低く、夏場は35℃も超える日本の酷暑は三瀬村にも容赦ありません。11月~4月でしたら、殆ど20℃を超えませんので理論的には三瀬村でも熟成するはずなのです。1~2年の熟成期間が必要な本格生ハムを作るならば、トンネル内にて環境を調整するのが経費的にも、品質の安定の為にもベストだと考えます。
今すぐにトンネルを掘るというのは非現実的なので、今年はドイツから「生ハム熟成庫」なる機械を導入すべく現在、交渉中です。研究開発段階で、販売できるまではかなり時間を要します。日本一の生ハム産地に育てるためには妥協は許されません。
パルマ地方はアルプス山地から乾いた冷たい山おろしの風が吹きます。窓をたまに開け放ち、室内でも温度管理さえ完璧に行えば高品質の生ハムが出来上がるそうです。この機械はなるべくその状態を人工的に作り出す物です。
ドイツのハムソーセージ屋でもパルマ産の生ハムといえば高級品として別格の扱いを受けますが、ドイツ産の生ハムもあり中でも黒い森地方の「シュバルツヴァルダーシンケン」は有名で、私も訪れた事がありますが、その生ハムを購入や食する為に、とても多くの観光客が訪問します。いつの日か「三瀬村産の生ハム」をそういった名産にまでできれば職人冥利に尽きますね。